鳥井工房について
当工房は、函館の自宅工房にてカメラの速写ケースやストラップなどの革小物をひとつひとつ手作りしている工房です。革本来の素材を生かしたタンニンなめし、染料仕上げの革を使用し、丈夫さと縫い目の美しさを求めて手間のかかる総手縫いにて制作しています。個人の工房なので既製品にはできない手仕事にこだわっていきます。オーダーの受付もしておりますのでぜひお気軽にご連絡ください。
「手仕事」へのこだわり
当工房では可能な限り手仕事にこだわります。金型で大量に革を切り抜いたりミシンを使用したほうが時間もかからず値段も安くする事ができます。しかしそれでは海外の工場で大量につくられている既製品とさほど変わらないものができてしまいます。made in japanという文字でしか製品の善し悪しを判断できないものを作るのはあまりにもつまらない。「手にとっただけで違いがわかる物を作りたい」というのが当工房の目指す所です。
ご注文について
当工房は基本的に注文を受けてから制作するパターンオーダーになります。(フルオーダーも可能です)ひとつひとつ手作りで制作するので、できるだけひとりひとりのご希望に添えるよう革の種類から糸の種類、さらにそれぞれの色をお選び頂いてからの制作となります。速写ケースの操作部の造作やストラップの長さ、細さもご希望があれば対応いたします。型紙の修正で多少金額が変わる場合もございますが大幅なデザイン変更でないかぎり追加料金はいただいておりません。
主な制作行程
制作行程は次のようになります
ハンドカット
裁断は革包丁を使って手作業で行っております。大量生産はできませんがサイズ変更や細かいデザイン変更など柔軟に対応することができます。他にも裁断面に意図的に微妙な角度を付けたりするのは手作業ならではの技です。一枚の革からパーツを切り出すときも繊維の方向やトラと呼ばれるしわの入り方など出来上がりを考慮してひとつひとつ丁寧に行っております。
革漉き加工
場合によっては革漉き機にて斜め漉きを行います。その場合も機械で漉きっぱなしでなく革包丁でなめらかに整えます。部分的に厚さを変える事により仕上がりに立体感が生まれます。ここの丁寧さが出来上がりに大きくでる所です。
手縫い(サドルステッチ)
縫製は全て手縫いで行っております。ミシン縫いとの違いは丈夫で縫い目が美しいことです。菱目打ちで針穴を開け表の糸と裏の糸が8の字になるよう一針一針縫っていきます。革の柔らかさや厚みなどによって力加減を調節しながら縫う事ができ、結果繊細で奇麗な縫い目が出来上がります。
コバの仕上げ
コバとは革の切り口の部分をそう言います。このコバの仕上げが当工房の作業工程の中で一番時間がかかっている部分です。切り目本磨きといわれる方法で仕上げております。この手法は裁断面を面取りしやすりで整えた後、染色し布海苔で磨き上げます。これを数回繰り返し完全に表面が整ってから熱したコテで蜜蝋を溶かし込みさらにフチを捻引きします。これによって蝋を奥まで染み込ませると同時に繊維を圧縮し革の性質を堅牢化させます。さらに紙やすりで磨きまた熱で蜜蝋を溶かし込む事を繰り返します。革の素材や色、固く仕上げるのか柔軟性が必要なのかによって回数や溶かし込む量を調節しながら美しく丈夫なコバを作り出します。このやり方は既製品ではまず見られないものです。通常は顔料仕上げといって切り口に顔料を塗っただけのものが一般的です。しかし顔料という革とは違う性質のものを表面に張っているという感じになり、使い続けていくと最終的にひびわれたりはがれたりしていきます。しかし切り目本磨きのコバはあくまで硬質化した革素材そのものであり、革と一緒に経年変化し多少の傷も磨き直す事で整えてやる事もできます。
鳥井伸志 shinji torii
1973年生まれ。もとは紙媒体のデザイナー。2010年頃から全ての行程を自分自身で行う「ものづくり」がしたくなり独学にて革制作を始める。
2012年鳥井工房を立ち上げる。